2002/6, No.4
まりちゃんは、親友のN子の娘である。かなりの美少女であり、今をときめく帰国子女である。帰国したてのころ、中学で先生に「明日、大学ノートを用意してきてね」と言われた彼女はまっすぐに先生の目を見て質問した。「どこの大学のですか?」
その彼女もいよいよ受験シーズンに入った。母親の車で志望校に書類を受け取りに行く日、彼女はめずらしく緊張していた。あれこれと準備怠りないことを母親と打ち合わせていた彼女は真剣に念を押した。「ママ、尺八持ってきた?」「?」「尺八だよママ。いつもよく持ってる奴」「??・・・あのね、まりちゃん、尺八は普通の人はあんまり持ち歩かないよ」「エー、そんなあ」「・・・!もしかしてそれ、シャチハタのこと?」「あ、そう。それ。シャチ・・・ホコ?」あのね、まりちゃん、印鑑とも言うよ。